モーニングトライアスロン

一ヶ月か二ヶ月に一回くらいの割合で、

豪快な寝坊をすることがあります。

 

目覚ましが鳴ったことは、知っている。

しかしそのあと意識を失い、再び夢の中へと

潜り込んでしまったらしいのです。

時計を見て一瞬芽生えかけたあきらめの気持ちを、

布団と一緒にはねのけます。

 

頭の覚醒が不完全なうちから、もう決戦の火蓋は

切って落とされました。

出発までのタイムカウントがスタートです。

いろいろ収まらなくても、とりあえず表面上の

体裁が整うことを最優先とします。

 

さながらアイドルライブの舞台裏のような

早着替え(多分)。

洗顔と歯磨きは同時進行、こんな時だからこそ

化粧の時間は歴代最短記録を更新するべく、

挑戦することを忘れません。

トーストをかじりながら走っている途中、

角でぶつかってくる転校生がいるはずもなく、

そもそも移動しながらものを食べられるほど器用では

ないため、何か適当に口に入れてから外へ。

 

駅までの全力疾走が、運命を二分する本競技の

クライマックスシーンとなります。

駅の時計が残り時間の少ないことを知らせます。

改札を抜け、階段を駆け下り、ホームに停まった電車に

飛び乗ったその直後、後ろで閉まる扉の音が!

 

周囲の人はわたしの必死すぎる形相に引いているだろうな、

と思いながら、自分で自分の健闘を称えるほかありません。

だけど、目の前で済ました顔して座っているあの人だって、

慌てふためき余裕をなくす朝が、幾度となくあったはず。

日々己の限界に挑んでいるのは、一部のトップアスリート

だけではありません。

絶対に負けられない戦いが、ここにあったのです。