まだ寒かった頃

電車の発車間際になって、慌てて降りようとしたおばさん。

ぶつかられたわたしは、軽くよろけてしまいました。

 

ドアの近くに立っていたおじさんが何かを拾い上げ、

おーい!とおばさんを呼びました。

しかし、おばさんはさっさとホームを歩いて行ってしまい、

気づく様子がありません。

 

ええい、仕方ない!

おじさんはホームに向かって、何かをしゅっと投げました。

直後、絶妙なタイミングで閉まるドア。

動き出した電車から見えたのは、ホームにぽつんと取り残された

手袋がひとつ。

 

だれだかわからないけど、あとは頼んだ。